karimasu

アニメとゲームのことを書きます

「難しく考える初心者」と「正しい基本」と「考える楽しみ」の話

昨日こんな風な内容のツイートを見た。

「知人に教えてもらったことを書き留めたメモです格ゲー初心者ギルティ4~6階向け(画像とイラスト添付)」

メモの内容は中級者以上がやっているような本格的な攻略がずらずらと書いてあって、それを見た私は「初心者の割にずいぶん難しいことをやろうとしてるんだな」と思った。
「そういう人もいるんだな」くらいに思って特に気に留めなかったが、やはり同じことを考える人はいて、「考えすぎ」「○○だけしてればいい」と言及するツイートも見た。
それで今日最初のツイートをした人のアカウントを見に行ったら「怖いのでツイート削除しました」とあった。
・・・・・・。
なんか可哀想だなと思った。

 

こういう出来事があってつらつらと考えたことを文章にしてみた。
前もって注記しておくとオチはない。

 

初心者が身の丈に合わない高度な技術を覚えようとする、というのはありがちな話だと思う。

youtu.be

↑最近見たネモさんの切り抜き動画。類似した話をしている。

今は上級者のプレイ動画や攻略情報がインターネットに溢れていて、それが「基本」だと思われやすい環境だ。
ましてや格ゲーは何年も続けている経験者が多いので、積極的にプレイしている層が上級レベルの情報を求めているというのもある。
冒頭に書いた初心者の人も、知人の格ゲー経験者にちょっと過剰な情報を詰め込まれてしまったのだと思う。

 

しかし、GGSTで4~6階レベルというのは自キャラの操作も覚束ない段階だろうし、もっとシンプルで「本当に基本的なこと」を抑えるべきというのが尤もな話だろう。
ただし、それはそれで問題がある。
それは初心者にとっては「本当に基本的なこと」が何なのかわからないということだ。
上級者は「本当に基本的なこと」を理解していて、当たり前のことのように「飛んでコンボしてれば勝てるよ」と言ってのける。
しかしその当たり前の結論も、初心者にとっては未知の事柄だ。
間違いなく最も注力すべきことが目の前にあっても、取捨選択に失敗するのはしかたのないことだろう。

 

では、初心者が過剰な情報を与えられることなく、ごく単純で的を絞ったことを教えられたとしたら成功なのだろうか。
ここにも罠が潜んでいると思う。
それは「簡単かつ効率的、が必ずしも正しい基本ではない」ということだ。
例えば、
・昇竜をパナしまくれば勝てる
・突進技を連発すれば勝てる
といった流儀を初心者が教われば、確かに初心者同士の対戦では勝てるだろうが、それは果たして正しいことなのか。
邪道でも勝てればいい、と考えるのか。
まずは勝利の美酒の味を覚えさせることが優先、と考えるのか。
いずれ通用しなくなる戦法を覚える意味はないから真面目にやるべき、と考えるのか。
そのゲームの醍醐味を味わうためには真っ当なプレイをすべき、と考えるのか。
人それぞれ意見が分かれるところだろうし、初心者本人の目標や姿勢に寄っても答えが変わってくるだろうから、正解はない。
そうなってくると、単純なことを教える、ということが実は単純ではないことがわかる。

 

そして、仮に教わる本人の価値観にマッチした方法で指導が行われたとしても、それが100%良いとは思えないことが一つある。
例えば、師匠が完璧なアドバイスをして弟子はそれを吸収するだけでぐんぐん成長したとして。
それは一見健全なことに見えるが、逆に、弟子が自分でいろいろ考えて上達する機会を師匠が奪ってしまったとも言えないだろうか。
他人に教わるよりも自分で悩んだ末に得られた知恵の方がその人のためになるなら、たとえ正解であっても、安直に答えを教えればいいというものではない。
(これに近い話はウメハラさんも『勝負論』などの著書で度々述べている)
初心者が背伸びしているのを見ても、それを止めさせるのは自分で考える楽しみを断つことになるかもしれない。
もちろん、結局身につかなくて挫折してしまっては最悪なので、誰かが救ってあげる必要はあるのかもしれないが。

 

こういうことをあれこれ考えて、簡単に口出ししてしまいそうなことでも一筋縄ではいかないものだと思った。